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不安はテニスのパフォーマンスにどう影響するのか
How anxiety affects tennis performance
この論文は、不安が「どう感じ、どう考え、どう行動するのか」といった心理的機能である3つのシステムすべてにどう影響するのか述べています。これらの3つのシステムの相互作用は、特に競技場面でしばしばテニスパフォーマンスを妨げる不安の負のサイクルによって説明されます。
(文責:スポーツ科学情報部会 高橋)
Coaching & Sport Science Review - Issue 52, December 2010
不安はテニスのパフォーマンスにどう影響するのか
How anxiety affects tennis performance
Andrew Peden, PH.D (Bolton Arena High Performance Tennis Academy, UK)
<はじめに>
不安は、普遍的現象である(Somers et al., 2006)。
状況に応じて、不安は有益な感情になるかもしれない。
スポーツでは、不安は私たちが別にしないことをするように動機づけるかもしれない―例えば、テニスでより良いプレーをするためにより多く練習する。
しかしながら、不安は時々有用であると同時に、時折それは機能不全になるかもしれない―つまり、これは有益な方法で行動する能力の妨げになるかもしれない。
<3つのシステム:身体と精神、そして行動>
不安が私たちの身体と精神に影響し、私たちがどう行動するか理解することが重要である(Seligman et al., 2001)。
そして、これらは複雑で絶え間なく変化する3つのシステムの相互作用であることを理解することも重要である。
つまり、身体、考え、行動-私たちが不安な時、どう感じ、どう考え、そして何をすべきか。
<身体不安>
私たちは不安になると、体の中で身体的変化や感覚を経験している。
これらの感覚は闘争心や闘争反応の要求に応えるため、アドレナリンの生成によって引き起こされる。
身体の器官組織に与えるアドレナリンの影響は多い(van Zijderwald et al., 1991)が、心拍数と呼吸の変化、筋緊張の増加、温度変化、そして一般的な神経系の過度な覚醒を含んでいる。
<認知不安>
認知は思考である。
個々の認知スタイルは、自分自身や他者、世の中についての典型的な考え方である。
特定の認知スタイルと思考様式は、不安と強い相関がある(Riskind & Williams, 2005)。
不安の認知モデルの背後にある中心的な考えは、それは私たちを不安にさせる外界の出来事ではないということである。
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それは、情緒的反応として不安をもたらす出来事の知覚である。
例えば、もし私たちの最近の試合で悪いプレーをし、全て負けたならば、次のトーナメントの時、前の感覚の記憶を誘発しそうであり、不安認知につながり、自信喪失の思考を含んでいる。
不安を感じるとき、私たちの認知は危険の知覚に関連している傾向がある―身体的(実際のケガの脅威)もしくは心理学的(例えば、自尊心の喪失)。
不安認知は、一般に自信喪失や心配、危険と脅威の思考を含んでいる。
これらの不安に関係した知覚は、典型的にネガティブな無意識の思考につながる―その思考は、理路整然としないで頭に入り、いやな感情的な感覚に関連づけられる。
ネガティ ブな無意識の思考は、一般に、「私はできない、きっとできないだろう」のような発言することから始まる、例えば、それらは、しばしば自分自身あるいはある状況で機能不全に陥る仮定によって実証されている。
例えば、「1位以外は、失敗したことを意味している」など。
機能不全の仮定は、ストレスを感じている時に特に多く見られるかもしれない。
「ストレス」は、私たちに提起した要求の知覚とそれらの要求に対処する知覚能力との相違であると定義されている(McGrath, 1970)。
この定義は、その状況だけでなく個人やその状況についての信念の重要性も認めている。そのため、同じ状況は一人の人によるストレスというより、他者の挑戦としてみえるかもしれない。
もし私たちは提示された要求に対処できると感じれば、多くのストレスを感じることはなさそうである。
それらの要求に対処する知覚した能力を大きく超えた要求であると分かったとき、不安が生じる。
この不一致は、典型的に不安と恐怖を引き起こす。認知そして身体不安両方が過度なとき、パフォーマンスを妨げるだろう。
<パフォーマンス予測>
テニスの試合で、多くの身体的脅威にさらされることはありそうもないが、心理社会的脅威にさらされる可能性がある。
例えば、悪いパフォー マンスをすることの恐れからくる自己イメージに対する脅威など。
もし私たちは、はるかに下回った能力であると知覚した対戦相手と試合する場合、簡単に勝てることを期待し、結果として多くの不安を感じることはないであろう。
同様に、もし対戦相手は、はるかに上回っている能力があると知覚すれば、成功の期待は低いであろう-私たちは、負けることを予期するので、不安を感じないようである。
不安は、能力の点で接戦となると知覚した相手と試合をする時に多くの問題となる。
これらの試合は、定義上、接戦となり、きっと緊張が引き起こされるであろう。
<筋緊張と覚醒>
高レベルの覚醒と不安は、筋緊張を増すことにつながる。
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スポーツの成功は、筋の協調性に大きく依存しているため、高いレベルの不安は、身体的パフォーマンスの妨げとなり、選手を緊張させ、過緊張となる。
筋緊張は、低レベルでも協調性の妨げとなる(Weinberg & Hunt, 1976)、結果として粗末なパフォーマンスを生じてしまう。
筋緊張は足を重く感じさせ、結果として反応を遅らせ、粗末もしくはぎこちないフットワークとなる。
筋緊張は、呼吸が早く浅いと息苦しさを引き起こし、簡単に私たちを疲れさせる。
もし試合が接戦でタイブレークもしくは3セット目に入った場合、疲労し危機時点まで低下した筋中の神経的緊張を通して多くの不必要なエネルギーを費やすかもしれない。
私たちの多くは、少なくともこれらの困難をいくらか経験している。
全ての選手は、能力にかかわらず、サーブの時、特に試合の重要なポイントで、肩と腕の緊張を感じ、ダメなサーブや嫌われているダブルフォルトにつながってしまう。
試合中、ダブルフォルトが重大で決定的な瞬間にどの� �うにして生じるのか、また、ゲーム中、一つのダブルフォルトがしばしば2回もしくは3回連続して引き起こすことに気づいたことがあるか?
筋緊張は、この突然のパフォーマンス低下の主要因である。
サーブは技術的に身につけることが最も難しいスキルの一つで、特に互角の試合ではしばしば勝敗の差となる。
プレッシャーの下におけるスキルのように、最も難しく、最低限習得され、あるいはごく最近身に付けたものは、最初に失敗する。
<ネガティブな無意識の思考>
増加した不安もまた集中し、明瞭かつ積極的に考える個々の能力に影響する(Williams & Elliott, 1999)。
テニスの試合で不安を抱く選手は、不安を感じさせる特殊なコート状況で喚起した一連のネガティブな無意識の思考をする傾向があるだろう。
このような思考は、次のことを含むかもしれない:「あのサーブをミスしたから、俺はダメだ」もしくは「またダブルフォルトをするな!」
<あがり>
プロスポーツ選手は、ネガティブな無意識の思考、身体的覚醒、緊張、パフォーマンス低下から逃れられない。
ゴルフでは、「イップス」と呼ばれている。
他のスポーツでは、それは時々ひどい神経質と名づけられている。
しかしテニスでは、「あがり」と称されている。
プレッシャー下のあがりは、選手が典型的に重要な状況で失敗するとき生じる(Weinberg & Gould, 2003)。
<儀式>
多くのスポーツ選手は、儀式もしくは迷信行動を行う(Schippers & Van Lange, 2006)。
テニス選手の中でも、「幸運な」ソックスを履くことを好む者がいる。
また、男性プロは時々勝ち続ける限り髭を剃らない。ある選手は、前のポイントを獲ったボールを再び使ってサーブする。
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極端ではあるが異常なレベルではなく、ある選手は試合前の準備している間ずっと固定したルーチンを行っている―例えば、同じホテルに滞在する、毎日同じレストランの同じ席で同じ食事を摂る、試合会場には同じ運転手に送ってもらい、その間同じ音楽を聴く、など。
コート上で選手を近くでみると、ポイント間のタオルの使い方や、サーブ前にボールを一定の回数をバウンドさせること、ゲーム間にイスで紐を結んだり解いたりのように衣服を調節することなど、高度化された儀式が見られるだろう。
これらの迷信行動が集中力を助長し、外的な気を散らすものから選手の注意をそらすと同時に、選手がこれらや他の迷信的儀式を行う主な理由の一つは 、不安をかわすためである。
表面的には無害に見えるかもしれないが、これらの儀式と迷信の問題点は、一部の選手にとって、もし彼らがなんらかの理由で儀式を妨げられれば、彼らの不安レベルは、さらに高くなり、本当に重要であることや実際にコントロールしなければならない唯一の事象(例えば、試合)に注意を向ける能力を妨げてしまう。
適応を助ける儀式は、テニスでは重要な仕事である。
それらは試合前の準備をコントロールするといった感覚を増加させることによって、選手の不安管理を助けるかもしれない。
また、それらは選手がコート上ですべきことをよりコントロールし、対戦相手の行動をコントロールすること(例えば、試合を減速し、あるいは加速すること)さえも可能となるかもしれない 。
儀式は、選手の無益な思考を散らすことによって、または外面的な気を散らすものを閉ざすことによって、まさに注意を集中する際、特に有用となる。
<自己実現の予言>
あなたは、セカンドサーブでダブルフォルトしそうか、どのくらいの頻度で分かったことがあるか?
あなたは、サーブゲームをキープできず、対戦相手が試合を切り返し、あなたに勝とうとしている試合で、サーブを打つ時、どのくらいの頻度で自分の能力を疑ったことがあるか?
これらはいわゆる「自己実現の予言」の例えで、ネガティブセルフトークの変化は、筋緊張の要因となり、協調性の抑制とミスをもたらす。
それらは、どういうわけか選手がすべきことをほとんど忘れてしまうような、すべきではないことに� �くの注意が向いてしまう。
例えば、ダブルフォルトを避けようとあまりに集中するため、サーブすべき向きの全ての感覚を失ってしまう。
<回避>
不安は典型的に不快に感じるため、一般に不快感情を減らすために短期的に、普通は回避を含んだ特定の行動につながる。
例えば「試合の間、余りに不安なため、再び同じ相手と試合することを避けるであろう」とか、「余りにも負何なのでもうリーグ戦には出ない」など。
短期的に、回避行動は不安を減らす。
しかし、回避はより多くの回避を生み、長期的には同様の状況で再び生じる不安の可能性を強化・増強する。
それゆえに、回避は無益である。
不安を克服するために、それらを克服できることや、感情と行動をコントロールすることを学ぶために、不安に立ち向かう必要がある。以下の表は、不安についての身体と認知、行動の結果をまとめたものである。
<ネガティブサイクル>
増大した身体的覚醒やネガティブな無意識の思考、回避行動は、コート上にいることが身体的な不安感覚やネガティブ思考、イメージを引き起こす「悪循環」を作り出す。
そして心理社会的脅威を増加させ、結果として自動覚醒が増大し、よりネガティブな思考となる。
また、その点で身体的にも精神的にも効果的に試合をする能力が抑制される。
これは余りに多くのクラブ選手が、競技場面でうまくいかない理由である。
例えば、彼らは「ノック」あるいはソーシャルゲームを自由にまた見事に行うが、ラダーやリーグ戦では常にはるかに技術能力を欠く選手に負けているように見える。
<悪循環を断つ>
不安のサイクルから抜け出すために、最適なパフォーマンスレベルでアプローチすると、有益な不安と無益な不安とでは異なることは重要である。
パフォーマンスを妨げるネガティブ自動思考や儀式の形式である無益な不安は、変化を妨げ深くとどめてしまう前に、はっきりと見分け、チャレンジしなければならない。
選手は、その代わりとして異なる試合� ��面や練習でも実行し、不安を和らげる効果を減少させる適切で建設的な思考パターンを応用する一連の柔軟なルーティンを構築するべきである。
例えば、「私が神経質であるのは、これが望んだことであるからで、もし私が神経質でなかったならば気にしなかったであろう。」
動機づけを与える不安は、促進されるべきである。
選手は、試合のプレッシャーに慣れ、正面からパフォーマンス不安に取り組むために、試合のような状況に可能な限り頻繁にアプローチすべきである。
(高橋 正則 訳)
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